May 15, 2015

東京都青ヶ島村を歩く。


 東京の南約360km、周囲9km の火山島。人口166人(2015年5月)の日本で一番小さな地方自治体、東京都青ヶ島村。船もヘリコプターも天候次第、「行けるのか、行けたとして予定どおりに帰ってこれるのか」、天気予報に気を揉みながら二泊三日で出かけてきました。

 羽田空港から八丈島まで飛行機で50分。そこからヘリコプターで20分。・・・のはずが、八丈島に着いた時点でヘリ欠航のお知らせ。そんなに天気悪くないのに。晴れ間ものぞいているのに。

 「空港から底土港までタクシーで急げば、青ヶ島行きの船に間に合うかもしれません。」ということで港までダッシュして、なんとか「あおがしま丸」に滑り込み乗船。

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 八丈島から見ると、青々とした海に浮かぶその様から「青ヶ島」と呼ばれるようになったとか。そんな言われを聞かなくても「青いな」と独りごちた海でした。
 島に近づいてみれば、なぜヘリが欠航したのか納得です。切り立った崖に囲まれた島の上部は雲の中、ヘリポートも厚い雲の中なんですね。



 現在稼働している港はこの三宝港のみ。断崖にトンネルを掘り、その先にコンクリートの桟橋を無理やりくっ付けた体の港です。
 上陸してみればそこは軽自動車の王国。潮風に吹かれて塗装がくすんだ軽自動車で、細く曲がりくねった道を進むと、やがて舗装が途切れ、その先は徒歩。







 きれいな二重カルデラの外輪山の頂、大凸部(おおとんぶ)に出ます。標高423m。360度、全方向水平線。島の中央の丸山は18世紀の噴火時の火口だそうです。


 丸山の山肌から吹き出す蒸気。この蒸気の吹き出し口が「ひんぎゃ」で、この熱を利用して製塩をやってます。地熱を利用した公営サウナもありました。



 夕方にはすっかり雲も晴れ、島で上がった魚と島で作っている焼酎「青酎」をたらふくいただき、夜には宿の表の道に寝転んで美しい星空を眺めて。そのまま寝ちゃいたいくらいだったけど、風邪引かないうちに部屋に戻って就寝。
 (ちなみに、青酎の製造所に税務署の人が酒税の査察に来たのは1990年代に入ってからで、青酎は長らく密造酒と変わらない扱いだったそうですよ。まあ、行きにくい島だし、製造量は少ないし、税収より徴税コストの方が高くつきそうですからねえ。)



 朝飯は7時半と聞いていたのに、6時頃ノックの音が。「雲海が出てるってよ。」
寝ぼけ眼で軽自動車を運転し、都道236号線「青ヶ島本道」を行くこと5分。絶海の火山島に雲海って、絵に描いたような景色です。



 この日、昼前から雲が広がってきたので、その日のうちに船で八丈島に戻ることも考えたけど、明日はヘリは飛ぶだろうと期待し、また仮にヘリが飛ばなくても「あおがしま丸」の臨時運航で帰れるだろうと高をくくって、もう1泊を決心。午後は小雨降る中、三宝港で魚釣りです。魚釣りする人と宿でお知り合いになったので、ご指導賜わることができました。で、夕飯は釣れたメジナを刺身と煮付けにしてもらってご満悦。





 翌朝は晴れて、ヘリコプターも無事運航。往路は船で3時間かかったのに、復路は20分です。

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 割と古い時代から人が住み、18世紀「天明の大噴火」で多くの犠牲者を出して一時は無人島になったものの、19世紀初頭に再定住「還住(かんじゅう)」を成し遂げたと言います。海の難所の火山島、断崖絶壁の脆い土地なのに、住めば都か、愛しい故郷だったんでしょうね。

 人々はみんな顔見知り、東京都内とは思えないユルい暮らし。午前7時半の羽田空港発八丈島行きの飛行機に乗れば、ヘリコプターに乗り継いで午前10時前には上陸できる異世界の島、青ヶ島。行ってみる価値ありです。



(追記)
 それにしても、この島の港、連絡船、ヘリパッド、学校、発電所、道路、上下水、役所、警察。たとえ人口166人でも人が住むとなるとこれだけの公共施設が必要になるわけですね。まあ、そのおかげで観光にも行けるんですが。
 調べてみたら、村の予算は毎年10億円程らしい。村民1人当たり約600万円。都内屈指の富裕な区、港区でも区の予算を人口で割ると約70万円なので、青ヶ島村の例外扱いぶりが際立ちます。ちなみに、予算10億円のうち村税収入は3500万円くらい。島の暮らしはみなさまの税金で維持されております。